44歳からの陶芸家

陶芸家 高見澤匠のブログです

匠の道具 陶芸道具の作り方 〜 しっぴき・切り糸編 〜

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匠の道具 〜 しっぴき・切り糸編 〜

 

今回は

前回の「弓・剣先」に続き「しっぴきと切り糸」を作ってみました。

 

encounter.hatenadiary.com

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しっぴきと切り糸の説明を簡単にすると、しっぴきはろくろで器を挽いた後に土と器を切り離す道具で、切り糸は主に粘土の塊などをカットするときなどに使う道具です。

 

今まで使っていたしっぴきや切り糸は両方とも糸やワイヤーが少し太く、シャープに切れないのが不満だったので今回は両方とも細いものにし、既製品のデザインも好きじゃないので糸やワイヤーを変える改造ではなく作ることにしました。

使用する材料と加工道具

(材料)しっぴき

  • 箸置き
  • 壺糸 墨壺用替糸(0.55mm)

(材料)切り糸

  • 箸置き
  • ワイヤー

(道具)

  • ナイフ・カッター など
  • キリ・リューター など
  • ヤスリ・グラインダー など

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しっぴきの材料

作り方(しっぴき)

今回はしっぴき・切り糸ともに木材を切り出すのではなく、気に入った箸置きをボディーにしました。

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縞黒檀の箸置き かたい木材なので水に浸ける事の多いしっぴきでも傷みにくいと思います

 

ろくろで器と土を切り離すラインを僕はしっぴきで付けるので、ラインがつきやすいように先端を削ります。

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ナイフ等で更に形を整え。

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ちなみに愛用ナイフは肥後守(ひごのかみ)ちゃんと「匠」の銘を彫ってもらってます(笑)

 

ヤスリで仕上げます。

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先端を尖らせ裏面はアールをつなげこんな形状に。

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折角2つあったので、切るところが長めになるタイプも作成。

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後ろに糸を通す穴を開けます。

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切り離すための糸は、通常タコ糸や水糸といったものが使われることが多いようですが、タコ糸は水につけていると繊維が傷み切れやすくなり、水糸は多分ポリエステルで水には強いのですが少し固過ぎたり太いものが多いので、今回は壺糸といって大工道具の墨壺に使用する水に強くしなやかな糸の細めのものを使いました。

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こちらも偶然「たくみ」印でした!それにしてもなんか悪い顔したキャラ(笑)

 

糸を穴に通し、適度な長さで切りカットした後端部を火で炙り綻ばないようにして完成です。

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作り方(切り糸)

次は切り糸。こちらも箸置きとワイヤー、ワイヤーが抜けないようにする為の小釘。箸置きは指掛が良く持ちやすそうな形状のものを選びました。

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箸置きの真ん中にワイヤーを通す穴を開けます。

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開けた穴にワイヤーを通し固結びをして穴から抜けないようにします。

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更に抜け防止に小釘を打ち込み完成です。

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完成

僕は前回の「剣先・弓」と同トーンになるようにボディの材料を変えましたが、既製品の「しっぴき」と「切り糸」を持ってる方は、デザインに不満がなければボディはそのままで糸やワイヤーが切れた時にでも、細いものに変えるだけでも使い勝手が良くなると思うので機会があったら是非お試しを!

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匠の道具 陶芸道具の作り方 〜 剣先編 〜

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匠の道具 〜剣先編〜

 

今回は

前回の「弓」に続き「剣先」を作ってみました。

弓・剣!?なんか書いてて今改めて気がつきましたが、武具の名前が多いですね!

 

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工房に先生の橋本さんが以前に自作された剣先があり、いつも実際の業務でよく使わさせていただいているのですが、これが市販のものより少し長くてとても使いやすい!!用途と技量によるとも思うのですが、僕の場合は厚手の粘土をまっすぐに切る時や石膏型に乗せた粘土の余ったフチを切る時などに多用しています。

 

使用する材料と加工道具

整列させた写真を忘れましまいましたすみません!下に材料と道具を書かさせていただきます。

 

(材料)

  • 傘の骨(剣先の剣の部分)
  • 銅のパイプ(φ5.0mm)
  • 竹串(先端を剣先と柄をとめるくさびに使用)

(道具)

  • 金槌
  • 金床【かなどこ】
  • ニッパー
  • グラインダー ←普通無いよッ!!(笑)
  • バーナー   ←ギリギリあるかな。。

 

作り方

まずは傘の骨を10~15cmくらいの自分好きな長さにカットします。

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アールの付いている面を下にして、金槌の丸い方で叩いて開きます。

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この時開く長さが剣先の長さになるので、自分の欲しい長さまで開きます。僕は今回25mmにしました。

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開いたら裏返し、金槌の平らな方で真っ直ぐになる様に叩きます。

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グラインダーで両側を斜めに削り取り剣先を作ります。今回は工房にあるグラインダーを使わさせてもらいましたが、グラインダーがある方の方が珍しいと思うので(笑)その場合は、伸ばした剣先をニッパーなどで両方から斜めにカットして、仕上げをダイヤモンドやすりなどで研いでも良いと思います。

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剣先が出来ました。相手は粘土なので刃を無理してつける必要は無いと思います。

ちなみに僕はキレキレに付けましたがッ(笑)

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バーナで真っ赤になるまで熱し、すぐに水につけて急冷し「焼き入れ」を行います。焼き入れを行うことで、金属内部の物性が変化して硬くなります。

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加工している時に先生が教えてくれたのですが、真っ赤に熱した後水につけて急冷せずに、自然にゆっくり冷ますと「焼鈍まし」【やきなまし】という処理方法になり、軟らかくなる様です。そういえば自在ワイヤーとかに焼きなましって書いてあった気が!あの様なイメージですね。

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以上で完成!!でも柄は少し細いですが十分だと思います。

 

が!!しかし

 

匠の道具 

なので柄をアレンジ。工房に銅のパイプがあり前から「ほほう、、エエの持ってますやん。。。」と目をつけていて先生におねだり!銅は曲がるからダメだよと言われるも得意の”駄々”を発動し銅のパイプを頂く。銅は曲がっても銅を使いたい気持ちは曲がらない(笑)

 

苦笑いしながらもパイプカットするパイプカッターもちゃんと出してくれる先生

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切りたい寸法のところに刃を当て、くるくると回します。

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剣先とパイプが抜けない様に竹串の先端をカットして楔にします。

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もうここまできたらカットした面もやすりがけしてキレイに!

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抜けなくなるところまで楔を差し込みます。

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銅のパイプも磨いてピカピカにして完成です!!

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切れ味、使い勝手も上々。

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完成

とまあ、また散々駄々をこねましたが(笑)「剣先」も「弓」と同じトーンで作れイメージしている道具の雰囲気が出てきたかな。今後もまた道具を作ったらUPしていきたいと思いますので、「匠の道具シリーズ」もよろしくお願いします!

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あと、作り方の詳しい動画も僕の先生のYouTubeに以前からUPされていますので、ご興味ある方は是非そちらもご覧いただければと思います!

 

"HASIMOTO SINOBU CHANNEL"

「剣先と針を作る」

https://www.youtube.com/watch?time_continue=984&v=nw4M2mdhpB8
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匠の道具 陶芸道具の作り方 〜 弓編 〜

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匠の道具 〜弓編〜

 

先日は広大なホームセンターに連れて行ってもらい大興奮!! 

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今週は早速その時購入した材料を使って、陶芸の自作道具を作ってみました。

 

今回の自作ツールは「弓」(粘土を針金で切る道具です)。僕の知る限りですが、既製品だとサイズがほぼ1種類で、張ってある針金が太い、そしてすぐに錆び倒す(笑)

 

この辺りが自分としては前々から気になっていたので、今回はその不満点を踏まえつつ自分の用途にかなった「弓」を作ってみました。

 

まずは既製品の弓↓いい感じに錆びております!

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先生に「弓を作りたいんですが」と言ったところ、「うんいいよ!じゃあコレに細い針金を張り替えなよ!」と言っていただいたのですが、前述した要件を満たしたかった僕は「ヤダヤダヤダッ!これじゃあ錆びるし大きいしピカピカしてないからヤダッ!売ってるものじゃないサイズが作りたいんです!」と駄々を発動(笑)

 

「じゃあどんな素材がいいの?」と言われたので「錆びにくいステンレスがベストですSUS304とか。。あ!真鍮とか銅もいいな!!(←錆びにくいのが要望なのに好きなビジュアルが浮かび早速日和るw)」

 

先生:「錆びにくいのがいいのに真鍮とか銅とかダメっしょ(笑)」「あと弓を張った部分に引っ張るテンションがかかるものじゃないといけないね!」

僕:「じゃあバネ鋼とかですかね。。ピカピカが。。。」

先生:「あ!いいのがあるよ!」

 

と色々苦笑いで相談にお付き合いくださり、ステンレスで錆びにくくバネ性があるという事で、車のワイパーの芯材で使われているものを出してくれました。*後で調べてみたところ”バーティブラ”という名称のパーツの様です。少し手で曲げてみたところ結構硬くバネ性(復元性)もあり良い感じ。

 

という事で、また前置きが長くなりましたが(汗)今回使用する材料と加工道具↓

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針金は既製品の弓に貼ってあるものより細い0.28mmのものを使用しました。

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まずは欲しいサイズに弓をカットし、針金を巻きつける溝をヤスリで作ります。

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その溝に針金を3巻きして、強く引っ張り反対側の溝にも3巻きします。ここでちゃんと針金が硬く張る様に強めに巻きつけます

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針金を巻き返しツルの部分にも3巻きして、針金が外れない様に巻きつけます。

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余った針金を切り落とし、針金の端部を危なくない様に内側に巻き込んだり、金槌などで叩きならします。

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完成です!!

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調子に乗りもう一回り小さいものも。

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3つ並べるとこの様なサイズ感。

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さっそく使用してみました。湿台(シッタ)に据える粘土を切ってみましたが、電動ろくろの回転や粘土に負ける事なく良い切れ味。

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既製品の弓だと当たり切れない裾の部分も

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こちらだと当たらずに切れます。

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弓の貼り加減も問題なかったのですが、もし硬い粘土を切る時などは↓この様に指で少しテンションをかけてやるとより粘土に負けずに切れそうです。

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取っ手の接合部の切り出しもしてみましたが、既製サイズのものより切りやすかったです。

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小さなサイズの加工には小さな道具、大きなサイズの加工には大きな道具と。当たり前のことかもしれませんが、やはり適したサイズの道具が作業がやりやすいと感じました。

 

昔からある道具やプロの道具屋さんの道具はノウハウが詰まり、いざ自作しようと参考させて頂くと「なるほど!!」と思うことが多いのですが、とても細かく道具の種類が細分化されて揃っているジャンルと、そうではなく大味な分類しかないジャンルがある感じがします。

 

自分の用途に必要十分なものが既製品にある場合大半は、既製品で十分に考え抜かれている場合が多いので、無理に自作する必要もないと思いますが、一方既製品はある程度の平均値を押さえたものにならざるを得ないということを念頭に、必要だと思った場合は臆せず作っていこうと思います。

 

もしそうではなく、いつの間にか道具は既製品だけと頼り切ってしまうと、その既製品の道具に作品が知らず知らずに規定されてしまうのではないかと考えるからです。前述の通り、もちろんその既製品で思った形状が出来たり、ちゃんとコントロールして目的の形状を作り出せれば良いのですが、コテなどが良い例でいつの間にか既製品のコテの形状で作品の形状が決まってしまうのではなく、作りたい形に合わせてコテを作るという様な意識を常に持っておきたいと考えています。

 

ってあれ!?なんか書いてるうちにいつの間にかトーンが変わって、えらく真面目になっちゃったな、、なにこれブロガーズハイってやつでしょうかー!?

 

なんか後半やけに真面目になってしまいましたが、正直な比率は後半真面目な話60%、作りたい欲求20%、あと、、陶芸道具かっこ悪すぎるよ、、、が20%です。

 

「道具は道具だろ、道具に見てくれやカッコなんかつけるなよ!」とのご意見もあるかとも思いますが、そこは生まれた途端に名前に「匠」を冠された者の抑えられないサガとしてご理解いただければと思います(笑)


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